Dazzling Life vol.2

最終更新: 3日前

インスパイアー第2弾は、アートディレクター篠原氏から、前回のビジュアルが大変好評だったので、これをVIGLOWAのイメージビジュアルとしてシリーズ化したいと依頼がありました。



このインスパイアーの企画は、フォトグラファーとしての私の実験的写真を発信する場として、普段の広告の仕事ではできないようなビジュアルに挑戦していく企画です。


VIGLOWAとは、Vi(美)+glow(輝く)+wa(輪)/美しく、輝く、輪という意味を社名にした、アートプロデュースとアートの販売を手がけている会社です。


早速、篠原氏に詳しい話を聞いてみることにした。


Shinohara

今回もグランドコンセプトはDazzling Lifeです。12月といえば、クリスマスシーズンなので、月並みですが、雪とかサイレントナイトみたいな感じを表現できないかと思っています。


Hashida

具体的なモチーフなど、何かありますか?


Shinohara

具体的には、まだビジュアルが浮かんできません。イメージとしては、例えば、僕の故郷は北海道なので、この季節になると雪の結晶を思い出します。


夜空からしんしんと降る雪が、ジャケットや手袋の上に静かに舞い降りるのです。手袋に舞い降りた雪は、結晶まで肉眼ではっきりと見えて、一瞬のうちにすーっと消えていくのです。そしてまた、次の雪の結晶がゆっくりと舞い降りて来て、すーっと消えていく。その雪の結晶は、脆くて壊れやすいけど、消えてゆく一瞬の命に美を感じるのです。


夜空を見上げると、街灯に照らされて、キラキラきらめいている。天気の良い早朝に外へ出てみると、まだ雪の結晶が残っていて、あたり一面が太陽に照らされてキラキラ輝いているのです。まさに銀世界とはそこからきているのですね。現実のそのような風景に地元の人は、それほど美を感じないでしょう。寒さで、それどころではないですから。


また、北海道の住宅は、東北や上信越などの雰囲気と違って、煉瓦造りの家や煉瓦のサイロや、石造りの蔵などがありました。今でも、古い蔵やサイロを生かしてレストランやカフェにしているところが多いです。僕の子供頃の家も煉瓦造りの家で三角屋根で、煉瓦の煙突がありました。家の中は、リビングには暖炉とはちょっと違うのですが、煉瓦のペチカという暖房がありました。ペチカは、ロシアから来たものだと思います。屋根には煙突があり、本当にサンタクロースが煙突から、入ってくると思いました。


寒い外から、家に帰ってくると帽子やコートの肩に積もった真っ白い雪が、家の中の暖かい暖房で、すーーーーっと消えていく。この外と中のコントラストがすごいのです。北海道は、気温が低いので家に入るまで、雪の結晶がそのまま残っているのです。


Hashida

雪の無い南国育ちの私には、何とも羨ましい世界ですね。

前回のように何かメッセージをいただけるとありがたいのですが。


Shinohara

そうですね。25年位前に読んだ、松岡正剛のフラジャイルという本を思い出します。

その本のタイトルには、「弱さはつねに過激である」というコピーが忘れられません。

テーマは、Fragileですね。僕が、イメージしている美は、脆くて儚いものの中に美という強さがあるという感じです。決して、繊細で弱々しいだけではないです。


Hashida

雪の結晶、素敵ですね。透明感があって、汚れを知らない無垢な象徴そのもの。そしてはかないもの、Fragile。新しい扉ですね。


熱く語る篠原氏の話を聞いて、まだ具体的にイメージが湧かないが、とりあえずスタジオに戻って時間をいただくことにした。


Hashida

インターネットで、雪の結晶の映像を探してみる。真っ白な銀世界の中で空から舞い降りてくる雪の結晶、ダイアモンドダストの美しさに言葉を忘れる。荘厳、純白、透明な詩そのものだ。

そんな美しい残像を持って、モチーフである雪の結晶を探しに街にでる。スワロフスキーやハンズで、クリスマスのオーナメントも探してみるが、どれもピンとこない。写真は現実の被写体がなければ撮れない。リアルな雪の結晶は手に入らないので、とりあえずそれらしい飾り物の結晶を買って、スタジオに戻る。


フェイクの結晶でテスト撮影を始めてみた。

空から柔らかく舞い落ちるイメージを狙ってみたが、う〜ん、何かが違う。結晶の作り物感がどうしようもないし、それに篠原氏の感じたメッセージが聞こえてこない。



雪の結晶のもつ、はかない美のメッセージって、何だろう。しばし黙考する。


人の手のひらに舞い落ちてくる、雪の結晶。

その命の終末で神が与えてくれた、ダイヤモンドのような一瞬の輝き。

透明な時間の中で作られた脆くあやうい存在が、そのはかなさの「終末」で美しく光り輝く。Fragile(はかなさ)の中に、めくるめく美が凛としてある。そして、Dazzle


Hashida

さらに考える。

美しい雪の結晶であれば、自然を撮る写真家がはるかに素晴らしい写真を撮っている。

それをあえてスタジオで撮ろうとする時、お店で買ったこの小さな数センチ四方の偽せ物の雪に、はかない命の輝きを託すことなど、できるのだろうか、、、

途方に暮れる。このジレンマを超えなければ、イメージは広がらない。


もう一度、篠原氏に今の気持ちをぶつけてみた。


Hashida

雪の結晶のテスト撮影をしてみましたが、ピンときません。篠原さんのいうメッセージが聞こえてきません。クリスマスの飾りだと、やはりチープで色々イメージに振ってもそれが写ってしまいます。

スワロフスキーのガラス製の雪の結晶なども見ました。完成度は素晴らしいのですが、ブランドが具体的すぎる気がして、今回のVIGLOWAのメッセージとしてはどうかなと思ってしまいます。

また、ネットでガラス作家の雪の結晶を見つけて、なかなかいいと思いましたが、現在完売とのこと。適当な被写体が見つからないと、何か考えなければなりません、、、

雪の結晶探しを続けますが、篠原さんの方で被写体探しなど、何かアイデアあればお願いします。


すぐに篠原氏から、メールでなく直接電話をいただいた。


Shinohara

抽象的すぎて、大変かなと心配していたところです。具体的な雪の結晶になってしまってはつまらない。雪の結晶にも見え、何か惑星にも見え、マクロの世界とミクロの世界を感じさせる感じがいいです。以前、買ったクリスマスツリーのエレメントでいいのがあるんですが、写メを送りますので、使えるかどうかご検討ください。5cmくらいの大きさなので、もしも小さければ、僕が作ってもいいかなと思っています。


Hashida

早速、神宮前の篠原氏のオフィスに現物を見にいく。実際に現物を見ると、何か三次元的で不思議なフォルムだ。


Shinohara

リアルに平面の雪の結晶ではなく、三次元的な奥行きのある方が色々な見え方ができていいと思います。


Hashida

なるほど、いいですね。すごくキラキラしてイメージも湧いてきました。これで、やってみましょう。


Shinohara

テーマは、雪の結晶でなく「繊細なもの(Fragile)ほど、美しく力強い」を忘れないで。


スタジオに戻り、再び撮影に取り掛かる。

このフェイクの結晶で表現できるもの、、、それを探すのだ。

と、ある閃きが、ふっと頭をよぎる(Inspire)


Hashida

雪の結晶の美しさやきらめきを、あえてスタジオで撮るということは、例えフェイクであれ結晶そのものを、美しく撮ることではないのではないか。


そのことにとらわれ過ぎていたかもしれない。そうではなく、結晶のはかない命の輝きからInspireされた「自分勝手な」イメージこそが、自然界でなく、あえてスタジオで撮る意味なのではないか。結晶を撮らずに、結晶の命の輝きを撮る。印象派が現実を自在に変えるように。何かが肩から落ちて楽な気持ちになる。そして、新たなイメージも天から舞い降り始める、、、 カメラに向かう。


新しいイメージを撮影後、すぐに篠原氏にメールで画像を送る。


Hashida

篠原さんの電話一本で出会った金色のオーナメント。それが例えフェイクであれ、不思議な輝きを生んでくれました。青い静寂の中で、その命のはかなさを慈しむように、きらめく輝き。はかないものだけが持てる命の輝き、その一瞬の圧倒的な美しさ(Dazzle)をイメージしました。篠原さんの感想はいかがでしょう?



Shinohara

正直、思ってもみなかったビジュアルでびっくりです! すごくいいと思います。

こんな簡単にOK出していいものかと思いましたが、 ほぼ、注文をつけようがないです。 このエレメントのブレがいいですね。くるくるっと舞い降りてくる妖精でもある。 すっと、現れてすっと消えていくような瞬間の動きを感じます。 宇宙空間のようでもあり、顕微鏡でのぞいた結晶のようでもあり、 目に見えない壮大な何かマクロとミクロが繋がっているようです。

イームズの実験映像で、芝生に仰向けになっている人物をどんどんカメラが引いていくと大気圏を超え、太陽系宇宙の果てまでも行ってしまい、それが、今度は戻ってきてどんどん人物に近づき、体内に入り込み、ミクロの決死隊のように細胞の中まで入り込むPower of Tenという映像がありますが、それを思い出しました。

欲を言えば、センターのエレメントにもっとシャドーが入り、立体的な奥行きがあっても良いかと思います。レイアウトは、もっと斜めに振ると画面の動きが出ていいです。 不安定感があった方が良いかと思います。


Hashida

なるほど、篠原氏のいう通りである。再度、撮影した画像を送る。

確かに宇宙の空間のように感じますね。夜空を駆ける流れ星の一瞬の輝きを、

結晶のはかない命のきらめきに重ね合わせて、、、、


Shinohara

ポスターのレイアウトを作ってみました。

いやーー、素敵!いいですね!



Hashidaのつぶやき

雪の結晶という神様が作った完璧な造形を、Fragileというテーマを求めて、スタジオで試行錯誤していくInspireとなった。リアルとフェイク。現象と想像。記憶とイメージ。様々な相反するベクトルの壁を、お互いのキャッチボールによって越えることができた、また新しいInspireになった思いです。

このブログを読んでいただいている皆さまに、 Merry Christmas のメッセージとなればうれしい限りです。


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